子供のビザ

子供同伴の駐在員が帰任命令を受けた時、まずは子供の退学時期、日本の帰国子女受入校の有無、受入時期、受入条件など子供の進学事情を調べなければなりません。では、親が帰任した後、子供の滞在資格はどうなるのでしょうか?

【同伴家族ビザは21歳まで】 一般に、子供は同伴家族のビザを取得して滞在しています。親が帰任した時点で、家族は同伴家族としての滞在資格を失います。駐在員帰国後も家族がアメリカに残るためには、家族は駐在員帰国前に別のビザ滞在資格に変更する必要があります。また、子供は21歳に達した時点で同伴家族としてのビザは認められなくなるので、アメリカで引き続き学校に通うためには21歳に達する前に学生ビザに切り替える必要があります。

【大学生のビザ】 大学に進学する子であれば、F1学生ビザに変更申請することができます。F1への変更申請は、アメリカ国内で移民局に滞在資格(I-94)をF1に変更申請を行うか、或は、日本の米国大使館か米国領事館でビザ・スタンプを申請する方法があります。アメリカ国内で滞在資格(I-94)をF1に変更する場合、申請先移民局によって審査に3か月から7か月ほどかかるので、かなり前に申請を行う必要があります。アメリカ国外に頻繁に出入りする子であれば、アメリカに入国するためにF1ビザ・スタンプが必要となるので、日本の米国大使館か米国領事館でビザ面接を行い、F1ビザ・スタンプを取得する必要があります。日本でビザ・スタンプを申請した場合、面接に問題がなければ一週間以内にビザ・スタンプが指定住所に送られてきますので、新学期が始まる前に比較的短時間にビザを取得することができます。ただし、F1ビザは移住する意思をみせてはいけないビザなので、父親の同伴家族としてすでにアメリカに長期間滞在している子であれば、F1を申請した学校を卒業した後に日本に戻る意思がないことを疑われ、F1ビザの発行を拒否される可能性があるので要注意です。

【高校生のビザ】 子供は親の同伴家族ビザを持っている間は公立の学校の授業料は免除されますが、親が帰任したあとは同伴家族の滞在資格を失うので、無料で学校に通うことはできません。高校生の場合、親の帰任後引き続き公立高校に通うためには、F1ビザを申請することがきますが、公立高校に関しては、F1ビザは1年間しか認められません。私立校であればF1ビザの期間に制限はありません。また、F1ビザで公立高校に通う場合は、一人頭にかかる授業料の支払いを義務付けられます。

【小・中学生のビザ】 小中学生の場合は、F1学生ビザで公立校に通うことはできませんが、私立校に通うことができます。この場合、全寮制の学校にいれるのか、地元も家族のホームステイをさせてもらうのかなど、子供の世話は誰がするのか学校と相談しながら決める必要があります。

【母親の同伴ビザ】 子供が学生ビザに切り替えた場合、母親には家族用のビザはありませんが、母親はB2観光ビザ滞在資格に変更したり、また一旦国外にでてビザ・ウエイバー(ESTA)で米国に入国するも可能です。しかし、ESTAでの滞在は一回に最長90日まで、一年間に合計で180日以上滞在することができません。ビザ・スタンプが10年間有効なB2観光ビザを取得することもできますが、一回の滞在期間は入国事情に応じて通常90日くらいしかもらえません。一回に90日以上の滞在期間をもらうのはまれです。B観光ビザはESTAとは異なり、アメリカ国内で滞在期間を延長することができますが、B2観光ビザで長期滞在すると、次回の入国時に短期滞在目的ではないと判断され、入国を拒否される可能性があるので要注意です。

中には母親が滞在中に語学学校に通ったり、正規の学位プログラムに入学する場合があります。この場合は、母親がF1学生ビザに変更申請することで、21歳未満の子どもは同伴家族用のF2ビザを申請することができ、引き続き現地校に通うことができます。ただし、母親の学生ビサ申請の理由が自分の学業目的ではなく、子供の米国での就学目的であると判断されると、申請は却下される可能性があります。

【永住権】 父親が駐在中に家族と一緒に永住権を取得した場合、のちに父親が他国に転勤になっても、子供と母親はそのまま米国に残ることができます。仮に父親が米国を長期不在にして永住権が失効した場合でも、母親と子供は、永住権保持者としてそのまま米国内で生活を営むことができます。永住権を取得していれば、州立大学であれば州内住民用の安価な学費が適用され、各州奨学金やローンの申請もできるようになり、また、在学中のバイトや就職活動も自由になります。詳細についてはhttps://sites.google.com/site/iminhoh/homeを参考のこと。

【問題点】 日本の帰国子女枠での編入・受験の条件を満たすために、親の帰任後も学期終了まで数ヶ月間だけ米国に滞在したい場合、また、父親の帰任後もアメリカの大学に進学を希望する場合があります。帰任時期を学年度末に合わせることができれば、父親はその間アメリカに籍を置いたまま、日本に出張することもでき、家族のアメリカでの滞在資格もそのまま維持することができます。しかしながら、現実問題として、帰任時期が子供の学期終了時期と一致しないことが多いために、帰国後の子どもの進学に影響がでることがあります。子供同伴の派遣社員に対しては、例えば、人事異動を計画する時に、現地校の学期終了時期などに合わせて帰任時期を決定するなど、子供の学校事情に配慮したよりフレキシブルな人事方針を採用することができれば、子供が学業が中途半端で退学することを避け、編入条件を満たし、編入時期に合わせて帰国することができるでしょう。子供の学校計画がしっかりしていれば、語学力や国際センスを持ち合わせた将来日本の経済担ってくれる貴重な人材の育成につながると思います。

留学ビザに関しては、研究者・留学生のためのアメリカビザ取得完全マニュアル (日本語)、羊土社出版、大藏昌枝(著)をご参考ください。

© 2018-2020 Masae Y. Okura

大蔵昌枝

大蔵昌枝

テイラー・イングリッシュ・ドゥマ法律事務所、パートナー。ジョージア州弁護士。福岡県出身。東京外国語大学外国語学部中国語学科卒業。サウス・カロライナ大学ロースクール・ビジネススクール卒業、Juris Doctor(法学博士)/MBA学位授与。米国公認会計士試験合格。ジョージア州弁護士資格取得。渡米前は、日本にて製造業、証券業界、金融業界で勤務。アメリカで大学院在学中は、国際留学生オフィスにて留学生のビザや就労に関する指導を行う。その他にも、大手保険会社で医療保険監査、法律事務所で日系企業の独占禁止法訴訟文献のドキュメント・レビューに従事。卒業後、大手法律事務所にて、南東部へ進出する日系企業の移民法・雇用法相談の他にも 会社設立やその他ビジネス全般に及ぶ幅広い法律相談サービスを提供。また、各種セミナー・講義や執筆活動も積極的に行う。日本語、英語、中国語の3ヶ国語に精通。カナダ・オンタリオ州在住歴。著書に「アメリカの陪審制度と日本の裁判員制度、陪審制の発展と意義」、「研究者・留学生のためのアメリカビザ取得完全マニュアル」がある。

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