H-1B 雇用主登録制度

H-1B 年間枠対象の新規申請者に対し、事前の雇用主登録制度が提案されています。これは昨年4月のBuy American and Hire Americanという大統領令13788に基づいたもので、H-1Bがより高学歴、或は高収入取得者を優先するように配慮された制度です。

今までの申請方法では、H1B申請者数が年間枠を大幅に上回っていたため、毎年4月の初週で申請受付を締め切っていました。移民局は20万件ものH-1B申請者情報を手作業でシステムに入力してから申請者を抽選にかけ、5月から9月にかけて当選者には当選通知を郵送し、落選者には書類を返送していました。

新システムでは4月の申請受付前の一定期間に雇用主がオンラインで雇用主と申請社員情報を記入し、そのデータをもとに移民局が申請者を抽選にかけ、当選した申請者のみH-1Bの申請書類を提出するように通知がきます。このシステムの導入により、移民局がH-1B申請者情報をシステムに入力する手間が省け、さらに当選者のみ申請書類を提出するので、落選者の書類を返送する必要がなくなるため、H-1Bの抽選と通知過程がより迅速に処理され、処理時間とコストが大幅に削減される見込みです。雇用主側も当選者のみの申請書類を作成することになるので、コスト削減に繋がります。

雇用主は社員一人につき登録は一回に限られます。つまり、同一社員に対して異なる職種で2回登録することはできません。ただし、別の雇用主が同じ社員を登録することはできます。また、申請は登録された社員の申請に限られますので、別の社員を代わりに申請することはできません。

また、今まではまずアメリカの大学から取得したマスター学位以上の学位保持者が上級学位用の2万枠の抽選にかけられ、落選者は更に一般用の6万5千枠で再度抽選に挑みました。新システムでは抽選順位が変わり、まず申請者全員が一般用の6万5千枠の抽選にかけられ、マスター以上の学位保持者で落選した人はさらに2万枠の抽選にかけられるようになります。提案された法案には高学歴や高収入取得者を優先するような明確な記載はありませんが、抽選の順番を変えることにより、実際にはマスター以上の学位保持者の当選確率が16%ほど高くなる見込みです。

当選者は移民局が指定する一定期間内に申請書類を提出しますが、従来の5日間の申請期間から60日間ほどに申請期間の幅が広がると思われるので、雇用主は余裕をもって申請できるようになる見込みです。また、今までは当年度の申請書類が4月初週に集中して申請されたために、移民局の審査に遅れがでており、そのために本年度も9月30日まで新規申請者のプレミアム特急申請(15日審査)がストップされ、9月末になってもまだ遅れに対応できずにプレミアム受付停止はさらに2月19日まで引き延ばされました。新システムでは従来の申請受付期間よりも申請受付期間に幅ができるので、移民局の書類受け入れ作業もよりスムーズになり、プレミアム中止の期間も今年ほど長引くことはないのではないかと思われます。尚、H-1Bの年間枠免除機関はこの制度には影響されません。つまり、大学機関や大学機関と連携している機関、政府や非営利研究施設、H-1Bの延長申請や雇用主変更申請、さらに過去6年間にH-1Bを保持したことがある人でH-1Bの残存期間がある場合は、年中いつでも申請は受け付けられます。

しかしながら、12月3日まで一般からのコメント期間が設けられ、現時点ではコメントが検討されている最中で、2019年度4月のH-1B申請時期までにこのシステムのテストが終わるか現時点では未定です。このため、何万社もの雇用主が一斉にオンライン登録をしてシステムにテクニカルな問題が出ないように、このシステムの導入を2020年度まで遅らせるように提案もあがっています。

© 2018 Masae Y. Okura

大蔵昌枝

大蔵昌枝

テイラー・イングリッシュ・ドゥマ法律事務所、パートナー。ジョージア州弁護士。福岡県出身。東京外国語大学外国語学部中国語学科卒業。サウス・カロライナ大学ロースクール・ビジネススクール卒業、Juris Doctor(法学博士)/MBA学位授与。米国公認会計士試験合格。ジョージア州弁護士資格取得。渡米前は、日本にて製造業、証券業界、金融業界で勤務。アメリカで大学院在学中は、国際留学生オフィスにて留学生のビザや就労に関する指導を行う。その他にも、大手保険会社で医療保険監査、法律事務所で日系企業の独占禁止法訴訟文献のドキュメント・レビューに従事。卒業後、大手法律事務所にて、南東部へ進出する日系企業の移民法・雇用法相談の他にも 会社設立やその他ビジネス全般に及ぶ幅広い法律相談サービスを提供。また、各種セミナー・講義や執筆活動も積極的に行う。日本語、英語、中国語の3ヶ国語に精通。カナダ・オンタリオ州在住歴。著書に「アメリカの陪審制度と日本の裁判員制度、陪審制の発展と意義」がある。

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