2020年度の移民法改正の動き 

2019年度も残りわずかになりましたが、今年も移民法や移民局の内部方針などに多大な変更が見られ、移民局での書類審査やアメリカ大使館や領事館でのビザ面接審査は非常に厳しくなりました。2020年度も引き続き、様々な面で変化がみられる模様です。2019年度に提案された法案の中でも2020年度に討議が持ち越されるものと、2020年度から施行が予定されるものとがあります。ここに、2020年度に注目すべき法案について説明します。

今年2月に提案された2019年の高度技能移民法の公平性案に訂正が加えられ、現時点では雇用ベースの永住権申請に関して、国別年間枠を取り除く法案が検討されています。永住権申請者が多いインドや中国には、優先枠によっては現時点で2年から10年以上の待ち時間があります。国別の年間枠がなくなると、インドや中国の待ち時間は大幅に短縮される半面、日本を含み現在待ち時間のない国には待ち時間ができることになります。2017年度から雇用ベースの永住権申請には全員面接が義務付けられましたが、場所によって面接の待時間が6カ月から3年以上あるため、それまではI-485を申請後4~8か月ほどで発行されたグリーンカードが今では1~3年以上ほどかかるようになりました。この法案が可決すれば、全体の年間枠が増やされない限りは、インドや中国以外の国籍保持者の永住権取得までの時間がさらに長引くことになります。

永住権申請過程の最後の滞在資格の変更(I-485)を提出するまでに待ち時間がある場合、ビザ種類によってはその間の旅行や転職に制限がでてきます。このような不便をなくすために、雇用主スポンサー申請(I-140)が承認されていれば、国別の待ち時間の有無にかかわらず、I-485を提出できるように提案されています。I-485を提出後、実際に審査されるまで待ち時間が長くても、I-485の提出と同時に就労許可証と旅行許可証を申請できるので、I-485を提出後6カ月が経過すれば、同類職種であれば転職することができるようになります。また、配偶者も就労許可書を入手できるので、自由に仕事をすることができます。なお、H1BやLビザは移民をする意思を示してよいビザなので、永住権申請中も国外からの出入りは自由ですが、それ以外のビザ保持者は、旅行許可書を入手したら、永住権申請中も自由に国外に出て入国することができるようになります。

この他には、今後6年間にわたり人材不足の職種には4,400程ビザの枠を設け、今後9年間にわたりインドや中国以外の国に在住する申請者に永住権申請枠の5.75%を充てる法案も提出されています。家族スポンサー移民申請の方では国別枠の数を増やすよう提案されています。短期就労ビザでは、50名以上社員を雇用する会社でH1BやLビザ社員が50%以上いる会社は、H1B社員をそれ以上スポンサーできない法案が出されています。

上記の移民法案以外にも、2020年4月には、雇用主の移民スポンサー申請(I-140)と永住権への滞在資格の変更(I-485)の同時申請を取りやめる法案が提出される予定です。現在、雇用ベースによる永住権申請では、国別年間枠による待時間のない国の申請者は、雇用主のI-140とI-485を同時に提出することができますが、この法案が可決すれば、I-140が承認されるまでI-485を提出できなくなります。I-485を提出できなければ、就労許可書と旅行許可書も一緒に申請できないので、ビザ種類によっては就労や旅行制限を受ける期間が長くなります。

2015年にH4保持者はH1B配偶者が永住権の申請を始めて一定条件を満たせば就労許可証(EAD)を申請することができるようになりましたが、H4保持者がIT関連のアメリカ人の職を奪っているというクレームがでているために、H4保持者のEAD申請権利を抹消しようという法案があがってます。2020年3月には再度詳細な規定が検討される予定です。従って、EADを使って就労しているH4保持者は、EAD申請ができなくなる場合に備えて、その他の就労ビザのオプションも検討したほうがよいでしょう。

© 2018-2020 Masae Y. Okura

大蔵昌枝

大蔵昌枝

テイラー・イングリッシュ・ドゥマ法律事務所、パートナー。ジョージア州弁護士。福岡県出身。東京外国語大学外国語学部中国語学科卒業。サウス・カロライナ大学ロースクール・ビジネススクール卒業、Juris Doctor(法学博士)/MBA学位授与。米国公認会計士試験合格。ジョージア州弁護士資格取得。渡米前は、日本にて製造業、証券業界、金融業界で勤務。アメリカで大学院在学中は、国際留学生オフィスにて留学生のビザや就労に関する指導を行う。その他にも、大手保険会社で医療保険監査、法律事務所で日系企業の独占禁止法訴訟文献のドキュメント・レビューに従事。卒業後、大手法律事務所にて、南東部へ進出する日系企業の移民法・雇用法相談の他にも 会社設立やその他ビジネス全般に及ぶ幅広い法律相談サービスを提供。また、各種セミナー・講義や執筆活動も積極的に行う。日本語、英語、中国語の3ヶ国語に精通。カナダ・オンタリオ州在住歴。著書に「アメリカの陪審制度と日本の裁判員制度、陪審制の発展と意義」、「研究者・留学生のためのアメリカビザ取得完全マニュアル」がある。

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