雇用主スポンサーによる永住権申請者面接義務

2017年8月に移民局は雇用主スポンサーによる永住権の申請者に対し、グリーンカード発行前に面接を義務付けると発表しました。2017年3月6日以降に永住権申請(I-485)を提出したものが対象となります。これはテロリストの入国を阻止するための大統領令13780, “Protecting the Nation from Foreign Terrorist Entry into the United States” の一環として、永住権申請過程に詐欺行為がなかったかを確認するための措置です。今回雇用主スポンサーによる永住権申請者全員に対して面接が義務つけられたことから、審査待ち時間に大幅な遅れらみられ、これ以前は4~6カ月ほどであった審査時間が現時点では11~23カ月まで伸びています。

滞在違反チェック】 以前は、何らかの問題が見られない限りは、雇用主スポンサーによる永住権申請者の面接審査は免除されていました。面接の通知が発行されるのは、過去に犯罪歴、逮捕歴、詐欺行為、不法就労、滞在資格違反などが見られる場合で、例えば、過去に飲酒運転で逮捕されたことのあるに者は面接通知が発行され、過去の警察書類や裁判記録などを提出し、永住権申請却下に該当する理由がないことを面接時に証明する必要がありました。逮捕や犯罪歴がある場合、道徳的犯罪“Crime of Moral Turpitude”とみなされる行為であれば、永住権の申請は却下されますので、逮捕・犯罪行為を行った当該州法において、その行為が道徳的犯罪に該当しないことを証明する必要があります。道徳的犯罪とは一般に1年以上投獄される可能性のある意図的犯罪を指します。一般に軽犯罪はこれには該当しませんが、重犯罪となるとこれに該当します。また、移民法上は最終判決のみならず、本人の陳述書も検討するために、最終的に不起訴になった案件であっても、警察への陳述書にその罪を認めるような言動があれば、移民法上は有罪扱いとなることがあるので、注意が必要です。

雇用歴チェック】 また、昨年1月より雇用主スポンサーによる永住権申請の際に追加書類としてI485Jの提出が義務付けられました。このフォームは雇用主スポンサー申請時に提出した雇用主情報、勤務地、職種内容などに変更がないかを確認するものです。特に永住権申請中に雇用主が変更となった場合、新しい雇用主の情報、職務内容などを記入し、転職先でのポジションが雇用主スポンサー申請時に提出した際の職務内容と同類のものである説明しなければなりません。雇用主が変更になっている場合は、新しい雇用主からのオファーレターや給与明細なども準備し、転職先の職務内容もLabor CertificationやI-140雇用主スポンサー申請で申請した内容と一致していることを説明する必要があります。

今回の雇用主スポンサー永住権申請者全員に対する面接の義務化により、過去の犯罪歴や滞在資格違反歴のみならず、永住権で申請したポジション内容に変更がないかなども厳しくチェックされるようになりました。従って、申請者は過去の職歴、現在の職務内容、永住権で申請した職務内容を正確に説明できるよう準備をする必要があります。また、本人も気が付かなかった過去の違反がないかなども、事前に確認する必要があります。例えば、H1B社員の勤務地を変更した雇用主が、移民局に訂正申請をしなければならないことを知らなかった場合など、移民法違反を問われるので注意が必要です。その他にも、H1Bで保証した給与を支払っていなかった場合、また、H1Bで申請した職務とは異なる仕事をしていた場合など、滞在資格の違反となりますので、注意が必要です。よく見られるのが、弁護士や第3者が作成した書類内容を雇用主や本人がチェックしていなくて内容を全く把握していない場合等、後になってから過去に申請した内容と実体が異なることに気づくことがあります。従って、過去の申請書類の内容に問題がないかを事前に確認して、面接時に問題なく解答できる準備をした方がよいとおもわれます。

© 2018-2019 Masae Y. Okura

大蔵昌枝

大蔵昌枝

テイラー・イングリッシュ・ドゥマ法律事務所、パートナー。ジョージア州弁護士。福岡県出身。東京外国語大学外国語学部中国語学科卒業。サウス・カロライナ大学ロースクール・ビジネススクール卒業、Juris Doctor(法学博士)/MBA学位授与。米国公認会計士試験合格。ジョージア州弁護士資格取得。渡米前は、日本にて製造業、証券業界、金融業界で勤務。アメリカで大学院在学中は、国際留学生オフィスにて留学生のビザや就労に関する指導を行う。その他にも、大手保険会社で医療保険監査、法律事務所で日系企業の独占禁止法訴訟文献のドキュメント・レビューに従事。卒業後、大手法律事務所にて、南東部へ進出する日系企業の移民法・雇用法相談の他にも 会社設立やその他ビジネス全般に及ぶ幅広い法律相談サービスを提供。また、各種セミナー・講義や執筆活動も積極的に行う。日本語、英語、中国語の3ヶ国語に精通。カナダ・オンタリオ州在住歴。著書に「アメリカの陪審制度と日本の裁判員制度、陪審制の発展と意義」がある。

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