自宅勤務とH1B規定遵守

新型コロナウイルス(covid-19)の蔓延のために、社員の解雇、一時帰休、時間削減、或は自宅勤務を強いられていた社員も、徐々に職場に戻る傾向がでてきています。しかしながら、職場の安全対策の不備、或は感染を極力避けるために、依然として自宅勤務を推奨している雇用主も多く見受けられます。そこで、就労ビザ保持者の勤務体系の変更についての注意点について説明します。

通常の就労ビザ保持者は、遂行する職務内容に多大な変更がない限りは、移民局に対して訂正申請をする必要はありません。ただ、H1B就労ビザに関しては平均賃金順守の義務があるため、H1B社員の職務内容に変更がなくても、勤務地が変わる前に移民局に訂正申請を行わなければならない場合があります。

【平均賃金の順守】 H1B 雇用主には平均賃金順守の義務があります。雇用主はH1B社員に対し、その地域内で設定されている当該ポジションの平均賃金レベル、或は、同職社員に支払われている賃金のいずれかの高い方を支払う義務があります。勤務地が複数ある場合は、各勤務地の平均賃金を個別に調べ、社員に支払う給与額がそれぞれの勤務地の平均賃金を下回っていないことを確認しなければなりません。平均賃金は各地域毎に設定されますが、一地域には通常複数の周辺カウンティーが含まれています。

【社内掲示】 雇用主はH1B社員のポジション、賃金、勤務場所、勤務期間などの情報を記載した社内掲示書を社員の全ての勤務場所のそれぞれ2か所に10営業日間掲示しなければなりません。これは、外国人を低い給与額で雇うことによりアメリカ人の職を奪うのを阻止する目的です。従って、もしH1B社員の給与額や勤務内容に違反があれば、社員は労働局に通報することができます。社内掲示がおわったら、掲示場所を明記し、署名したものをPublic Access Folder (PAF)に保管します。PAFには賃金や勤務地情報を保管します。第3社から希望があればいつでも閲覧できるように、H1B社員のPAFは全て一か所に保管しなけれなりません。

【労働条件申請書】 H1B書類を移民局に提出する前に、雇用主は労働局からLabor Condition Application (LCA)の承認を得なければなりません。LCAには勤務地、平均賃金、給与情報を記入し、上述の社内掲示の掲示開始後に、LCAをオンラインで労働局に提出します。勤務地が複数ある場合は、各勤務地の平均賃金情報を記載し、H1B社員に支払う実際の賃金額が各勤務地の平均賃金を下回っていないことを証明します。LCAが承認されたら、H1B申請書類と一緒に移民局に提出します。LCAのcopyもPAFに保管します。

【勤務地変更・追加】 一般に、H1B社員はLCAに記載された住所のみで働くことができます。記載された住所以外の場所で勤務する場合は、移民局に訂正申請を提出する必要があるか、事前に検討しなければなりません。

  • 社外での短期勤務。H1B社員は一年に合計30日まで、LCAで申請した住所以外の場所で勤務することができます。申請した場所以外での勤務が年間に30日を超える場合は、その勤務先で社内掲示をするか、或は移民局に訂正申請を提出する必要があるかを検討しなければなりません。
  • 自宅内掲示。自宅勤務に変更になった場合、自宅住所管轄のカウンティーが平均賃金の当該地域に含まれていれば、移民局にH1Bの訂正申請を提出する必要はありません。その場合、自宅勤務が始まる前に、自宅2か所に社内掲示書を10営業日間掲示し、掲示が終わったら、掲示書に署名をし、PAFに保管します。
  • 移民局への訂正申請。自宅勤務で自宅住所が平均賃金の当該地域に含まれていなければ、勤務地が変更になる前に移民局にH1Bの訂正申請を提出する必要があります。その場合、新たに自宅住所の平均賃金を調べ、自宅住所の平均賃金が支給給与額より下回っていないことを確認します。自宅住所を書いた社内掲示書を自宅の勤務場所2か所に10営業日間掲示し、掲示開始後にLCAをオンラインで労働局に提出します。これが承認されたら、移民局にH1Bの訂正申請を提出します。移民局への提出後、新しく追加した勤務地で勤務を始めることができます。承認を待つ必要はありません。LCAと社内掲示はPAFに保管します。

従って、コロナ・ウイルスの影響で一年に30日を超えて自宅勤務をする場合は、自宅の住所が平均賃金で承認された地域に包括されているか確認し、自宅内で職務情報の掲示を行う義務があるのか、或は移民局への訂正申請を提出する必要があるのか確認する必要があります。

© 2018-2020 Masae Y. Okura

大蔵昌枝

大蔵昌枝

テイラー・イングリッシュ・ドゥマ法律事務所、パートナー。ジョージア州弁護士。福岡県出身。東京外国語大学外国語学部中国語学科卒業。サウス・カロライナ大学ロースクール・ビジネススクール卒業、Juris Doctor(法学博士)/MBA学位授与。米国公認会計士試験合格。ジョージア州弁護士資格取得。渡米前は、日本にて製造業、証券業界、金融業界で勤務。アメリカで大学院在学中は、国際留学生オフィスにて留学生のビザや就労に関する指導を行う。その他にも、大手保険会社で医療保険監査、法律事務所で日系企業の独占禁止法訴訟文献のドキュメント・レビューに従事。卒業後、大手法律事務所にて、南東部へ進出する日系企業の移民法・雇用法相談の他にも 会社設立やその他ビジネス全般に及ぶ幅広い法律相談サービスを提供。また、各種セミナー・講義や執筆活動も積極的に行う。日本語、英語、中国語の3ヶ国語に精通。カナダ・オンタリオ州在住歴。著書に「アメリカの陪審制度と日本の裁判員制度、陪審制の発展と意義」、「研究者・留学生のためのアメリカビザ取得完全マニュアル」がある。

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